平成 10 年夏学期 物性化学試験問題

理科一類 14, 15, 21 組
出題者  林 利彦
問題用紙 1 枚、解答用紙両面 2 枚

問題 1

タンパク質を構成するアミノ酸の一つ、L-アラニン (C3H7O2N)の構造式を記せ。 一般にアミノ酸が脱水縮合してポリペプチド鎖ができる。 ポリペプチド結合の特徴を意識し、タンパク質の構造について解説せよ。 結合角と結合の長さ、π 電子、光の吸収、立体配置、光学異性、立体配座 (コンホメーション)、アミノ基、カルボキシル基、二重結合性 (同一平面に乗っている原子)、α らせん、β シート、 タンパク質の立体構造、などのキーワードを用いるようにせよ。

問題 2

以下の表の中の化合物の沸点の違いを分子間相互作用 (非共有結合性の相互作用)の観点(自由エネルギー、エンタルピー、 エントロピーなど)から、分子の構造との関係で考察せよ。 すべての液体の沸点でのエントロピーはだいたい等しく、およそ 90 J K-1 mol-1(トルートンの法則)である。 水のように水素結合があると蒸発のエントロピーは約 110 J K-1 mol-1 である。 エタノールとプロパンの蒸発熱をこれらの値を用いて計算せよ。

沸点と融点の間に相関はあるか。 融点と沸点の関係が他の化合物から著しく異なる物質があるか。 それは何故だと考えられるか。

化合物化学式融点/℃沸点/℃
メタノール CH3OH -97.864.3
エタノール CH3CH2OH -114.578.3
1-プロパノール CH3CH2CH2OH -126.597.2
2-プロパノール CH3CH(OH)CH3 -89.582.4
1-ブタノール CH3CH2CH2CH2OH -89.5117.3
エチレングリコール HOCH2CH2OH -12.6197.9
エタン CH3CH3 -183.6-89.0
プロパン CH3CH2CH3 -187.7-42.1
ブタン CH3CH2CH2CH3 -138.0-0.5
イソブタン (CH3)3CH -159.6-11.7
ペンタン CH3CH2CH2CH2CH3 -129.736.1
イソペンタン (CH3)2CHCH2CH3 -159.927.9
ネオペンタン C(CH3)4 -16.69.5

問題 3

炭素原子だけからなる化合物について、黒煙と炭(無定形炭素) とダイヤモンドと構造の違いと物質の性質との関係を述べよ。フラーレン (C60)あるいはナノチューブはこれらとどこが違うか。

問題 4

次の 8 つの中から二つを選んで、知るところを述べよ。
  1. R, S 表示
  2. フロンティア軌道と反応性
  3. 疎水性の相互作用
  4. 結晶場理論(遷移金属と配位結合を中心にしてもよい)
  5. 分子軌道法と原子価結合法
  6. 共役二重結合と光の吸収
  7. イオン半径とイオン結晶構造
  8. 電気伝導度と絶縁体、半導体、金属

番外:

本授業科目では物質の持つ構造の多様性の理解に必要な考え方を中心に講義しました。 本授業の中で、興味を持てたところがあったら、以下に書いてください。
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