============================================== 1999.12.20 発行 =========
極私的 Emacs カスタマイズ紹介マガヂン
Emacs をわたし色に染めて♪
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第 19 回 X にまつわるエトセトラ【完結編】
xmodmap でキー配列を変える(その 2)Control などの場合
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※あなたのカスタマイズをぜひ教えてください。一般的なものから、他の人は
絶対にしないような「外道」なものまで、何でも結構です。
※解除の方法は、このメールの末尾をごらんください。
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こんにちは。でるもんた・いいじまです。
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☆祝・1000 部突破☆
おかげさまで読者数が 1000 名様を超えました。
最初にこのマガヂンをはじめた頃は、まさかこんなに多くの方に
読んでいただけるとは思っていませんでした。
これからもよろしくお願いいたします。
☆姉妹紙のお知らせ☆
本日より、新しいメールマガヂン「Windows 95/98 管理人のための
MS-DOS 基礎講座」を開始いたししました。
マガジン ID = 0000022456
Windows95/98の管理には、MS-DOSの基礎知識がほぼ必須です。
このマガジンでは、Windowsでソフトのインストール等が一応
できる人を対象に、MS-DOSの基礎について説明します。
ATと98に両対応、上級者のツッコミ歓迎。
Emacs のマガヂンとはまったく関係ないのですが、Windows ユーザーの
方はぜひ読んでいただければと思います。
なお、創刊号はすでに配送済みなのですが、バックナンバーを
http://user.ecc.u-tokyo.ac.jp/~l94102/dos/
においてあります(登録もここからできます)ので、ぜひご覧ください。
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☆読者のお便りから☆
●最近の Linux の日本向け配布では、インストール時に Control の
位置を選べるものがあります。
また、自分は X を使っていないので loadkeys というコマンドを
使っています。
最近はそんな親切な環境が増えたとは知りませんでした(^^;)
loadkeys のほうは、これが第 18 回でちょこっと説明した
「各 OS がキー変更機能を提供している場合」にあたります。
詳しくお知りになりたい方は man loadkeys などで調べてみて
ください。
【注】loadkeys による設定は、試したわけではあり
ませんが、ひょっとしたら、X が動いていない
状態でのみ有効、ということになっているかも
しれません。
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☆今回のお題☆
今回は、xmodmap の話の完結編、Control・CapsLock・Shift などの
キーの場合です。
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☆宿題の答え☆
その前に、前回の宿題の答えです。
>○(3) で、Home キーを押したときに何も起こらないようにするには
> どうすればよいか?
これは、Home キーが BackSpace の隣にあり、間違って押して
しまうことが多いので無効にしたい、ということでした。
正解は、
keysym Home = NoSymbol
です。
> ○(4) で、Shift+カーソルがきちんと Shift+カーソルと認識
> されるためにはどうればよいか?
こちらは、
keycode 34 = Left F11
keycode 35 = Down F12
keycode 36 = Up F13
keycode 37 = Right F14
となっている環境で、Shift とカーソルキーを同時に押した
ときに、Shift とファンクションキーが同時に押されたように
なってしまうという問題でした。
これは、
keysym Left = Left
keysym Down = Down
keysym Up = Up
keysym Right = Right
で大丈夫です。= の左辺は F11〜F14 と書いてもいいのですが、
本当に F11、F12 キーのある環境でも悪さをさせないためには
Left、Down、Up、Right と書いておくのがいいでしょう。
なお、本当に F11、F12 がほしいという場合もあると思います。
幸い、このキーボードにはカナロックキーがありますので、
「カナロックがかかっていれば F11〜F14」としておくのも
悪くはないでしょう。
【余談】私自身は、カナ入力派でありながらカナロックキーは
殺していました。tcsh がカナロックキーによる半角
カナの入力を受け付けなかったせいです。ただ、いま
UNIX で使っているキーボードはそもそもカナロック
キーがないので、特に何もしていません。
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☆さっそくやってみよう☆
さて、それでは Control、CapsLock などの入れ替えにいってみましょう
…とはいっても、じつは次のような方法ではうまくいきません。
!間違い(1) AT 互換機、左 Control と CapsLock の入れ替え
keysym Control_L = Caps_Lock
keysym Caps_Lock = Control_L
【余談】PC-98x1 の場合は、たとえば次のように書くことになります。
!間違い(2) PC-98x1、Control の隣の CapsLock を殺す
keysym Caps_Lock = Control_R
keysym F15 = Caps_Lock
以下では、上の AT 互換機の例で説明します。
これを実行しても、いっこうに Control は Control のまま、
CapsLock は CapsLock のままになっています。
ところが、xev コマンド(Solaris なら /usr/openwin/demo/xev ですが、
Linux などでは標準で PATH に入っていることも少なくありません)で
調べてみると、たしかに、
○Control と刻印されているキーを押したときには Caps_Lock が
○CapsLock と刻印されているキーを押したときには Control_L が
押されたと表示されています。
いったいこれはどうしてでしょうか。
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☆modifier map という曲者☆
実は、これらのシフトキー類(man xmodmap では modifiers と言って
います)の場合、キーを単体で押したときの機能の他に、「押しっぱなし
にして(あるいは、押してから)別のキーを押したときの機能」の設定も
しなければいけないのです。
たとえば、次のような設定をしたとします。
keysym Control_L = a A
このとき、Control と刻印されているキーを単に押したら、小文字の 'a'
が入力されます。あるいは、Shift と Control を同時に押したら、
大文字の 'A' が入力されます。
ところが、この Control キーと、たとえば 'c' を同時に押してみて
ください。そうすると、アプリケーションはこれを Control+C と認識
したはずです。
実は、上の設定では、「Control と刻印してあるキーを単体で押した
ときには、アプリには 'a' が押されたと伝えてほしい」という設定を
しただけです。先に出てきた Control と CapsLock の入れ替えの例でも
同様で、その設定は、Control キーを単体で押したときに何か動作を
するようなアプリに対しては正しい設定なのです。
☆xmodmap -pm で見てみると☆
ところが、それとは別に、「他のキーと一緒に押したときに、Control
modifier として働くのは、キーコード何番と、何番のキーと、何番の
キー」という設定項目があります。これを変更してやらなければいけ
ないのです。
この設定内容(modifier map)は、「xmodmap -pm」で調べることが
できます。たとえば、手元の環境で xmodmap -pm を実行すると、
shift Shift_L (0x32), Shift_R (0x3e)
lock Caps_Lock (0x42)
control Control_L (0x25), Control_R (0x6d)
mod1 Alt_L (0x40), Alt_R (0x71)
mod2 Num_Lock (0x4d)
mod3
mod4
mod5 Scroll_Lock (0x4e)
と表示されます。この 2〜3 行目を見ると、
○押したとき CapsLock として働くのは、キーコード 0x42 番
(これは 16 進数ですので、10 進数に直すと 66 番になり
ます)のキーであって、このキーに現在割り当てられている
キーシンボルは Caps_Lock である
○他のキーと一緒に押したときに Control として働くのは、
キーコード 0x25(37)番と 0x6D(109)番で、これらの
キーに現在割り当てられているキーシンボルはそれぞれ
Control_L と Control_R である
という意味のことが書いてあります。
そこで、最初に出てきた
keysym Control_L = Caps_Lock
keysym Caps_Lock = Control_L
を実行させてみると、その後の xmodmap -pm の出力は
shift Shift_L (0x32), Shift_R (0x3e)
lock Control_L (0x42)
control Caps_Lock (0x25), Control_R (0x6d)
mod1 Alt_L (0x40), Alt_R (0x71)
mod2 Num_Lock (0x4d)
mod3
mod4
mod5 Scroll_Lock (0x4e)
となります。つまり、「キーコード 0x42(66)番のキーが CapsLock で
ある、0x25(37)番のキーが Control である」という指定は変わって
いないのです。
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☆では、どう書くか☆
そこで、次のように書きます。
remove Lock = Caps_Lock
remove Control = Control_L
keysym Control_L = Caps_Lock
keysym Caps_Lock = Control_L
add Control = Control_L
add Lock = Caps_Lock
最初の 2 行で、それぞれの modifier map からキーを削除します。
続いて、keysym 文でキーを入れ替え、add 文で、いま入れ替えた
キーをそれぞれの modifier map に追加します。
【補足】ここで、もし最初の remove 文がなければ、元のキー
0x42(66)と 0x25(37)が元の modifier map に
残たままになってしまい、xmodmap -pke の出力は
次のようになってしまいます。
lock Control_L (0x42), Caps_Lock (0x25)
control Caps_Lock (0x25), Control_R (0x6d),
Control_L (0x42)
つまり、これでは、どちらのキーも Control の機能と
CapsLock の機能を兼ねることになってしまいます。
☆remove と add の評価される順序☆
最初の
remove Lock = Caps_Lock
remove Control = Control_L
という文は、「その文を解釈した時点において Caps_Lock/Control_L
が割り当てられているキーすべてを、Lock/Control modifier map から
外す」という意味です。
ここで「その文を解釈した時点において」というのは、
○先に keycode/keysym 文が実行されていたら、その処理を
した後で
○その後に keycode/keysym 文が書いてあっても、それは
関係なし
という意味です。つまり、上の Control/CapsLock 入れ替え例では、
remove 文の前に keysym 文を実行する場合には
keysym Control_L = Caps_Lock
keysym Caps_Lock = Control_L
remove Lock = Control_L
remove Control = Caps_Lock
! 前例と remove 文の右辺が違うことに注意。
! 以下 add 文は前例と同様
のように書くことになります。
一方、そのあとの
add Control = Control_L
add Lock = Caps_Lock
は、「すべての keycode/keysym 文の処理が完了したあとにおいて、
Control_L/Caps_Lock が割り当てられているキーすべてを、Control/Lock
modifier map に入れる」という意味です。
つまり、この場合、右辺の Control_L というのは、keycode/keysym 文
によるキー交換が終わった後の Control_L、つまり、物理的には CapsLock
と刻印されている、キーコード 0x42(66)のキーという意味になります。
なお、これは、add 文が keycode/keysym 文より先に書いてあっても
同様です。
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☆べつの実例☆
いままでは Control と CapsLock の入れ替えを例として紹介してきま
したが、もう一つの実例を取り上げたいと思います。第 18 回の冒頭でも
紹介した、PC-98x1 デスクトップマシンでの CapsLock の取り扱いの
問題です。
このキーボードの場合、たとえば次のようにするとよいでしょう。
remove Lock = Caps_Lock
keysym Caps_Lock = Control_R
keysym F15 = Caps_Lock
add Lock = Caps_Lock
add Control = Control_R
ここでは、CapsLock と刻印してあるキーを、Control_R(右コントロール
キー)に変更しています。Control_L でも別にかまわないのですが、区別
できるのですから別にしておいた方が、あとで何かいいことがあるかも
しれません。
また、CapsLock があったほうがいいと考える人のために、F15(vf・5)
キーに CapsLock の機能を割り当てています。CapsLock 機能がいっさい
必要ないひとは、その部分をカットしてもいいでしょう。
【注意】このコードは、実機がないので検証していません。
動作保証はいたしかねますのでご了承ください。
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☆次回予告☆
次回からは Emacs の話に戻ります。が、具体的な予定は、未定です(^^;)
もうひととおり「言いたいネタ」は出してしまったので、今のところ
○「便利なマクロ」シリーズ第 4 弾
JIS 罫線素を使った絵を簡単に書くマクロ
○上級者向けに、cons や quote などの綿密な話
○「便利なマクロ」シリーズの、秀丸エディタへの移植
(というより、私は秀丸用と Emacs 用を同時並行で
開発しています)
○マクロを作る手順を step by step で解説
といったところを考えています。
なお、次回の発行は年明けになります。
1 月 8 日(金)には発行したいと思います。
それでは、よいお年を♪
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極私的 Emacs カスタマイズ紹介マガジン Emacs をわたし色に染めて♪
☆発行人☆
でるもんた・いいじま <L94102@mail.ecc.u-tokyo.ac.jp>
http://user.ecc.u-tokyo.ac.jp/~l94102/emacs/
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2016/03/10 15:09 JST
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