============================================== 1999.11.08 発行 =========
極私的 Emacs カスタマイズ紹介マガヂン
Emacs をわたし色に染めて♪
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第 16 回 物理行単位のカーソル移動 〜vz.el から一部を流用する〜
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※あなたのカスタマイズをぜひ教えてください。一般的なものから、他の人は
絶対にしないような「外道」なものまで、何でも結構です。
※解除の方法は、このメールの末尾をごらんください。
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こんにちは。でるもんた・いいじまです。
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☆後日注☆
今回紹介するのは vz.el ですが、他に physical-line-mode なるものが
あるそうです。
http://www.taiyaki.org/elisp/
vz.el で不具合がある場合はこちらのコードを試すといいでしょう。
じつは私も細かい不具合を発見しているのですが、あまり不自由しない
のでそのままにしてあります。
ただし、Emacs 20 以降で導入された defcustom 命令を特に何の断りも
なく使用していることから考えて、Mule 2.3 で動作させるには多少の
困難が伴うかもしれません。
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☆読者のお便りから☆
●メールを書くモードだと、せっかくご隠居いただいた C-c が復活
してしまい、特に、スクロールのつもりで C-c C-c と連打すると
メールが送られてしまうのはいただけません。何とかなりませんか?
これには、第 13 回・第 14 回で御紹介した「ホック」を
使います。たとえば、お使いのメーラーが MH-e なら、
(add-hook 'mh-letter-mode-hook '(lambda ()
(define-key mh-letter-mode-map "\C-c" 'scroll-up)
(define-key mh-letter-mode-map "\M-o\C-c\C-c"
'mh-send-letter)
))
とすれば大丈夫です。ただし、これはメールを書くモードで
C-c にご隠居願うだけですので、到着メール一覧表画面でも
C-c を止めるには、もっとたくさんの define-key が必要に
なります。
rmail なら、送信には mail モードを使っていますので、
(add-hook 'mail-mode-hook '(lambda ()
(define-key mail-mode-map "\C-c" 'scroll-up)
(define-key mail-mode-map "\M-o\C-c\C-c"
'mail-send-and-exit)
))
でたぶん大丈夫だと思います。ただし、私自身はこれを使わない
ので、一応の動作確認はしましたが、もしかしたら不具合がある
かもしれません。
☆
他のメーラーの場合は、まず、「そのメーラーで、メールを
書くときは何というモードになっているのか」を調べます。
mh-e の場合は、モードライン(反転表示行)に「(MH-Letter)」
と出たので、mh-letter-mode という予測を立て、
% cd /usr/local/share/emacs/19.34/lisp
% grep mh-letter-mode *.el
で探すと、mh-letter-mode-hook、mh-letter-mode-map、
mh-send-letter というキーワードが見つかりました。
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☆今回のお題☆
さて、今回は「物理行単位でのカーソル移動」です。
Emacs では、「改行から改行まで」を 1 行として扱います。
この「改行から改行まで」を、Windows 用エディタの世界などでは
論理行といいます。一方、論理行に対して、画面上の 1 行を物理行と
いいます。
【注意】この「論理行」「物理行」という用語は、必ずしも用法が一定
していないようで、逆の意味に使う人もいます。その人の感覚
では、「改行から改行まで」は、メモリ上の物理的な配置に
由来するから「物理」行であり、「画面上の 1 行」はコンピュ
ータの物理的な都合には関係なく人間にとっての 1 行であるから
「論理」行である、ということのようです。
カーソル移動などのコマンドも、基本的には論理行単位になります。
たとえば、
+------------------------------------------------------------+
|これは長い長い長い長い長い長い長い長い長い長い長い長い長い\\|
|長い長い長い長い長い長い長い長い長い長い長い長い行です。 |
|次にあるのは短い行です。 |
+------------------------------------------------------------+
という状態を考えてみてください。1 行目の末尾の「\\」は、次の行に
続いているという表示です。カーソルは 1 行目の 3 文字目の「は」に
あったとします。ここで下カーソルキーを押すと、カーソルはその下の
「長」ではなく、さらに下の「あ」まで進んでしまいます。また、
「は」からシフト+右カーソルや C-e(飯嶋式では C-f)などを押して
みると、カーソルは右端の「い」ではなく、「。」の次まで進んで
しまいます。
これは表示の直感に反しているので、何とかしよう、というのが
今回のお題です。
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☆vz.el を使う☆
さて、Emacs の世界には、そもそも物理行単位という発想が稀薄です。
そのため、物理行単位でカーソルを移動するコマンドは、ちょっと探した
ところでは見つかりません。
そこで、以前に名前が出た「vz.el」を使うことにします。もっとも、
(require 'vz) や (load-library "vz") のような形で呼び出すと、
すべてが vz 的になってしまってかえって不都合なので、必要な部分
だけを抜き出して .emacs に加筆するようにしましょう。
vz.el の入手場所は次のとおりです:
ftp://ftp.st.ryukoku.ac.jp/pub/emacs-lisp/vzel/
【後日補足】現在、この場所からは入手できません。
当マガヂンのホームページからダウンロードしてください。
http://www.ht.sakura.ne.jp/~delmonta/emacs/
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☆まずは解析☆
さて、上記サイトから vzel074.lzh をダウンロードすると、いくつかの
ファイルが出てきます。この中で、とりあえず VZ-KEYS.EL を読むことに
しましょう。
そうするとまず、
(define-key vz-mode-map [up] 'vz-previous-line)
(define-key vz-mode-map [down] 'vz-next-line)
という記述が見つかります。
また、そのしばらく先には、AT 互換機と PC-98x1 とで場合分けが
されていますが、
; AT 互換機用 vz と互換にする場合
(define-key vz-mode-map [home] 'vz-left-of-screen)
(define-key vz-mode-map [end] 'vz-right-of-screen)
; PC-98x1 用 vz と互換にする場合
(define-key vz-mode-map [M-left] 'vz-left-of-screen)
(define-key vz-mode-map [M-right] 'vz-right-of-screen)
という記述があります。
ということで、他の VZ*.EL の中から、これらのコマンドが定義されて
いる場所を探しだして、その部分だけを .emacs に書き込むことにしま
しょう。
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☆.emacs に書き込むべき内容は☆
さて、その後はひたすら grep して、これらのコマンドが定義されている
場所を探しましょう。
そうすると、VZ.EL の 500 行目あたりから
(defun vz-next-line ()
"Vz:↓"
(interactive)
(if truncate-lines
(next-line 1)
(or (eq last-command 'vz-next-line)
(setq vz-goal-column (% (current-column) (1- (window-width)))))
(if (eolp)
(progn
(forward-char 1)
(move-to-column vz-goal-column))
(vertical-motion 1)
(move-to-column (+ vz-goal-column (current-column))))))
(defun vz-previous-line ()
"Vz:↑"
(interactive)
(if truncate-lines
(previous-line 1)
(or (eq last-command 'vz-next-line)
(setq vz-goal-column (% (current-column) (1- (window-width)))))
(let ((ncol (- vz-goal-column (window-width) -1)))
(vertical-motion -1)
(if (<= 0 ncol)
(move-to-column ncol)
(move-to-column (+ vz-goal-column (current-column))))))
(setq this-command 'vz-next-line)) ;fake
;中略
(defun vz-right-of-screen ()
"Vz 画面の右端"
(interactive)
(vertical-motion 1)
(backward-char 1))
(defun vz-left-of-screen ()
"Vz 画面の左端"
(interactive)
(vertical-motion 0))
という定義があるのがわかります。
そこで、ここを .emacs に書き写します。
【後日訂正】実際には、このままではうまく行かない場合があります。
詳しくは次回(第 17 回)へ。
ついでに、vz-next-line と vz-previous-line では、vz-goal-column
という変数を使っているようですので、
(defvar vz-goal-column nil)
という記述もしておくといいでしょう。
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☆最後にキーを設定する☆
あとは、必要に応じてキー操作を設定するだけです。カーソルキーの
[up]、[down]、[(shift left)]、[(shift right)] と、対応する
Control+英字 の 4 種類、都合 8 つのキーを設定しましょう。
(global-set-key "\C-e" 'vz-previous-line)
(global-set-key "\C-x" 'vz-next-line)
(global-set-key "\C-f" 'vz-right-of-screen)
(global-set-key "\C-a" 'vz-left-of-screen)
(global-set-key [up] 'vz-previous-line)
(global-set-key [down] 'vz-next-line)
(global-set-key [(shift right)] 'vz-right-of-screen)
(global-set-key [(shift left)] 'vz-left-of-screen)
(global-set-key [down] 'vz-next-line)
さて、これで設定は終わりです。Emacs を再起動しましょう。
【後日注】執筆当時は、Shift+カーソルキーは [S-right] のように書いて
いましたが、XEmacs ではこの記法は使えないため、
[(shift right)] のように改めました。なお、こちらの記法は
Mule 2.3 や Emacs 20.x、21.x でも使用可能です。
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☆次回予告☆
次回の予定は、「第 17 回 X にまつわるエトセトラ」です。
今回は趣向を変えて、X Window System についてすこし扱ってみたいと
思います。内容としては、
○xmodmap によるキーカスタマイズの仕方
○Emacs のウィンドウサイズを変更する
の 2 本立てでお送りしたいと思います。
なお、xmodmap というのは、X Window System 上でキーの並びを変更する
ツールです。今までやってきた「Emacs 上でのカスタマイズ」では、
Control キーの機能を変更するということはできませんでしたが、
この xmodmap を使えば、「Control キーと Caps Lock キーを入れ替え
る」「DVORAK 配列のキーボードにする」といったことが非常に簡単に
できてしまいます。
それではまた♪
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極私的 Emacs カスタマイズ紹介マガジン Emacs をわたし色に染めて♪
☆発行人☆
でるもんた・いいじま <L94102@mail.ecc.u-tokyo.ac.jp>
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2016/03/10 15:09 JST
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