=============================================== 1999.10.4 発行 =========
極私的 Emacs カスタマイズ紹介マガヂン
Emacs をわたし色に染めて♪
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第 13 回 メニューバーとλ、ホック
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※あなたのカスタマイズをぜひ教えてください。一般的なものから、他の人は
絶対にしないような「外道」なものまで、何でも結構です。
※解除の方法は、このメールの末尾をごらんください。
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こんにちは。でるもんた・いいじまです。
気が付いたら前回発行からもう 3 週間も空いてしまいました。
たびたび遅れてしまって申し訳ありません。
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☆今回のお題☆
今回は予定を変更して、「メニューバーに項目を追加する」です。
それに関連して、非常に重要な(と思う)「ラムダ関数」と、
ラムダ関数が頻繁に使われる事例として「ホック」を紹介します。
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☆メニューバーに追加する (1) 既存のメニューに追加する☆
まずは簡単な例からいきましょう。
メニューバーの Help の項目には、Emacs Tutorial(M-x help-with-
tutorial;標準では C-h t;飯嶋式では M-h t)というものがあります。
これは英語版のチュートリアルです。
ところが、じつは日本語対応のものがあります。M-x help-with-tutorial-
for-mule、C-h T(大文字の T;飯嶋式では M-h T)です。
前回は Language: のところで Korean と入力しましたが、
ここで Japanese と入力すれば、とうぜん日本語のものが出てきます。
あるのなら常時使えるようにしておきたいものです。
さて、この設定は簡単です。~/.emacs にひとこと書き加えるだけです。
(define-key menu-bar-help-menu [tutorial-for-mule]
'("Tutorial for Mule" . help-with-tutorial-for-mule)
)
ご覧の通り、第 11 回で扱った「ファンクションキーの設定」と
そっくりです。唯一の違いは、最後の引数が単なる「'コマンド名」の
形ではなく「'("説明文" . コマンド名)」になっていることです。
【補足】(1)大括弧の中の tutorial-for-mule という言葉は、かわりに
何を入れてもかまいません。ただし、すでにメニューで
使われている名前とは重ならないようにしてください。
重なったときの挙動は後述します。
(2)括弧の中のふたつの項目の間には、ピリオドが入っています。
これを忘れないようにしてください。
(3)コマンド名「help-with-tutorial-for-mule」の前には、
アポストロフィはつけません。これは、すでにその外側の
括弧の前につけてあるからです。どうしてもコマンド名の
直前にアポストロフィをつけたい場合は、
(cons "説明文" 'コマンド名)
という書き方をしてください。また、「'コマンド名」の
かわりにキーマップ名を書く場合(後述)はアポストロフィ
をつけてはいけないので、この場合も
(cons "説明文" キーマップ名)
とします。なお、cons を使う場合は、ふたつの項目の間
にはピリオドはいれません。
なお、このように define-key を使った場合には、追加した項目が
Help メニューの先頭に来てしまい、いささか格好が悪くなります。
新しく追加する「Tutorial for Mule」が、既存の「Emacs Tutorial」の
直後に来るようにすると格好が良くなります。このためには、define-
key ではなく define-key-after を使います。
(define-key-after menu-bar-help-menu [tutorial-for-mule]
'("Tutorial for Mule" . help-with-tutorial-for-mule)
'emacs-tutorial
)
こうすると、Emacs Tutorial の直後に Tutorial for Mule が追加され
ます。
【補足】この emacs-tutorial という名前は、メニューに Emacs Tutorial
の項目が追加されるときに、[emacs-tutorial] という形で使われ
ていたものです。
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☆自分で新しいメニューを追加する☆
上で説明したのは、既存のメニュー(Help や Tools など)に追加する
場合でした。次は、メニューバーに新しいものを追加する場合です。
いままでに、いくつかのマクロを紹介してきました。
それを追加するためのメニューを作りましょう。
さらに、それだけではなく、「便利なのに、メニューバーには
入っていないコマンド」を入れてあげましょう。
メニューの名前は、仮に Delmonta としておきましょう。
さて、メニューを追加するのがキーを追加するのとほぼ同様だ、
ということは、上のことでわかっていただけたと思います。
ですから、新しく作る場合もキーの場合とほぼ同様の手順を踏みます。
◇キーマップ
まずはキーマップを作ります。マップの名前は慣習に従って
menu-bar-delmonta-menu としておきましょう。
(setq menu-bar-delmonta-menu (make-sparse-keymap "Delmonta"))
キーの場合は make-sparse-keymap には引数はありませんでしたが、
メニューの場合には、引数としてメニューの表題を与えます。
◇バーに追加
つぎに、メニューバーに追加します。
(global-set-key [menu-bar delmonta]
(cons "Delmonta" menu-bar-delmonta-menu))
(setq menu-bar-final-items
(cons 'delmonta menu-bar-final-items))
これも、キーを追加する場合と大きくは変わりません。なお、define-key
のあとの setq menu-bar-final-items は、単に global-set-key だけ
ではメニューのいちばん左側(つまり、Buffers の左)に出てしまって
格好が悪いからです。
【後日補足】menu-bar-final-items は XEmacs では使えないようです。
私は XEmacs は使っていないのであまり調べていないのですが、
XEmacs でも使いたい場合はとりあえず、
(if (boundp 'menu-bar-final-items)
(setq menu-bar-final-items
(cons 'delmonta menu-bar-final-items))
)
としておけばいいでしょう。
◇項目を追加
最後に、できたメニューバーに項目を足します。
ここは既存のバーに追加する場合と同じです。
ここでは、「後から追加したものが上に来る」というルールに従い、
下から逆順に記述していくことにしましょう。
(define-key menu-bar-delmonta-menu [tabwidth]
'("Set Tab Width..." . delmonta-set-tab-width)
)
(define-key menu-bar-delmonta-menu [linemacro]
'("Delmonta's Line Macro" . delmonta-line-macro)
)
(define-key menu-bar-delmonta-menu [separator1] '("--" . nil))
;区切り線
(define-key menu-bar-delmonta-menu [goto-line]
'("Goto Line..." . goto-line)
)
(define-key menu-bar-delmonta-menu [toggle-read-only]
'("Toggle Read-Only" . toggle-read-only)
)
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☆メニュー内容の削除とグレー化・差し換え☆
さて、いままではメニューに追加してきたわけですが、
ときにはメニューから消したいときもあります。
たとえば、Tools メニューの Read Mail という項目には、rmail という
コマンドが割りあてられていますが、このコマンドは仕様が古く、
たとえば、日本語を扱うときに、文字化け(普通の文字化けと違って、
極めて復旧困難です!)などの大きな問題を起こします。
というわけで、特に素人さんに使わせる場合は、できればこの機能を
使えないようにしたい、あるいは他のメーラーを使わせたい、と考える
ことでしょう。そういう場合に、いくつかの方法があります。
◇下準備
まず設定の前に、Read Mail という項目が、何という名前で登録されて
いるのか調べておきましょう。
% grep 'Read Mail' /usr/local/share/emacs/19.34/lisp/*.el
そうすると、menu-bar.el に
(define-key menu-bar-tools-menu [rmail] '("Read Mail" . rmail))
という記述があることがわかります。以下、この [rmail] という
名前を使って、いろいろな設定をしていきます。
【補足】逆にいうと、新しく項目を追加する場合に、すでにあるものと
同じ名前を使ってしまうと、すでにあるもののほうに悪影響が
あるということになります。
◇メニューから消す
まず簡単な方法としては、Read Mail の項目をメニューから削って
しまう、ということが考えられます。これは簡単で、
(define-key menu-bar-tools-menu [rmail] nil)
とすれば OK です。
◇グレー化する
あるいは、あえてそのまま残しておきながら、色をグレーにして、
選択できないようにする方法もあります。
(put 'rmail 'menu-enable '(not t))
最初の引数は、Read Mail で呼び出される rmail というコマンド名です。
ここではたまたま [] の中の rmail と一致していますが、一致して
いない場合、たとえば元の定義が
(define-key menu-bar-tools-menu [read-mail]
'("Read Mail" . rmail)
)
だった場合は、read-mail ではなく rmail のほうを使います。
次の引数はかならず 'menu-enable にします。
最後の引数は「どのような条件のときに選択可能にするか」で、この
場合は「常に選択不能」にしたいので (not t) すなわち nilにします。
逆に、ある条件の時だけ選択可能にしたい場合は、この部分を、
'(eq major-mode 'fundamental-mode)
のように、式にアポストロフィをつけた形で書きます。
【注意】この式には、単なる nil は書けないようです。
仕方がないので、ここでは (not t) としています。
◇Read Mail を MH や Mew に差し換える
rmail 以外にメーラーがある場合は、それに差し換えてしまうという
方法もあります。たとえば、次のようにします。
(define-key menu-bar-tools-menu [rmail]
'("Read Mail with Mew" . mew)
)
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☆引数つきのコマンドを実行するために - ラムダ関数☆
さて、今まで紹介してきたのは、「引数なしのコマンドを指定する場合」
でした。では、引数ありのコマンドを指定する場合はどうすればいいの
でしょうか。たとえば、第 9 回で紹介したカナ入力の場合、カナモード
とローマ字モードを切り替えるには、its:select-mode という関数に、
"roma-kana" または "kanainput" という引数を与える必要があります。
一つの方策としては、そういうコマンドを定義してしまうという方法が
あります。たとえば次のようにします。
(defun roma-kana-mode ()
(interactive)
(its:select-mode "roma-kana")
)
(defun kanainput-mode ()
(interacrtive)
(its:select-mode "kanainput")
)
(define-key menu-bar-delmonta-menu [roma-kana]
'("Roma-kana mode" . roma-kana-mode)
)
(define-key menu-bar-delmonta-menu [kanainput]
'("Roma-kana mode" . kanainput-mode)
)
ところが実は、このように定義しなくてもよい方法があります。
「ラムダ関数」という技法です。
このケースでは、ラムダ関数を使って、つぎのように書けます。
(define-key menu-bar-delmonta-menu [roma-kana]
'("Roma-kana mode" .
(lambda ()
(interacrtive)
(its:select-mode "roma-kana")
)
)
)
ラムダの使い方は、要約すると次のようになります。
○まず、「関数を定義してから、関数名を指定する」という
オーソドックスな方法で書いてみる。
○次に、「defun 関数名」の部分を lambda に変え、今まで
関数名を書いていた部分に (lambda () ...) を埋め込む。
○アポストロフィの有無は最初のままに残す。
さて、ラムダ関数は、関数名が書けるところならばだいたいどこにでも
書けます。たとえば、メニューではなくキーの定義にも使うことが
できます。簡単な例だと、
(global-set-key [(shift up)] '(lambda ()
(interactive)
(previous-line 3)
))
といった使い方ができます。
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☆おまけ - ホック☆
さて、ラムダ関数が出てきましたので、おそらくラムダ関数をもっとも
頻繁に使うであろう、ホックについて紹介しておきます。
ホック(hook)というのは、「あるコマンドが呼び出されたときには、
このコマンドを実行してください」という設定のことです。たとえば、
(add-hook 'dired-mode-hook '(lambda()
(define-key dired-mode-map "\C-h" 'kill-buffer)
))
のようにすると、dired-mode に入ったときに、
(define-key dired-mode-map "\C-h" 'kill-buffer)
が自動的に実行されます。
【補足】もちろん、add-hook の引数には、ラムダ関数だけではなく、
名前のついた関数を指定することができます。たとえば、
(add-hook 'dired-mode-hook 'display-time)
とすれば、dired-mode になったときに (display-time) が
自動的に実行されます。
【注意】add-hook は、一つのホックに対して複数回実行することができ
ます(それらのコマンドは所定の順序ですべて実行されます)。
add-hook のかわりに setq を使うと、今までホックに入って
いたものは消えてしまいますので注意してください。
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☆次回予告☆
次回は、「第 14 回 キー操作集大成〜コンソールからファンクション
キーを使う〜」の予定です。第 11 回でやり残したカーソルキーと
ファンクションキーの問題、また f10 キーをより ATOK 的にする方法、
その他の変なキー操作などについてご紹介致します。
それではまた♪
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極私的 Emacs カスタマイズ紹介マガジン Emacs をわたし色に染めて♪
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2016/03/10 15:09 JST
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