という方程式です。なお、a と b は定数ですが、r (x) は定数とは限りません。ただし、この部分に y や y' などが出てくるケースは非常にややこしい(この「数理科学 II」では扱いません) ので、ここで扱うのは r (x) が x だけの式の場合ということにしておきます。y'' + ay' + by = r (x)
さて、この形の場合、§1.3 や §1.5 と同様に、r (x) をどうやって処理するかがキーになります。いくつかの方法を見ていきましょう。
この方程式は、y'' + y = 0 という振動に、cos ωx という外力が加わったもの(強制振動)です。【例題】y'' + y = cos ωx
この方程式の右辺(非斉次項)は三角関数です。とすれば、 この方程式には同じ周期の三角関数の特解がありそうです。 さらに、この式には y''(位相が 180゜ 進む)はあっても y' (位相が 90゜ 進む)の項はありませんから、 すべての項の位相が同じになります。そこで、 y = a cos ωx (a は定数) という形の特解を仮定してみましょう。
この方程式に y = a cos ωx を代入して計算すると、
となります。したがって、ω ≠ ±1 ならば a = 1/(1-ω2) ですから、そのとき特解は(1-ω2)a cos ωx = cos ωx
となります。y = (cos ωx) / (1-ω2)
さてここで、§1.3 と同様に、 u = y - (cos ωx) / (1-ω2) とおきます。これを元の方程式に代入して整理すると、
となります。(この式は、右辺が 0 になっていることを除いて、 y を使った元の方程式とまったく同じ形をしていることに注意してください)この方程式の解は u = c1 cos x + c2 sin x ですから、 もとの方程式の解はu'' + u = 0
となります。y = c1 cos x + c2 sin x + (cos ωx) / (1-ω2)
そういう場合は、「未定係数法」という方法が便利です。
y'' + y = cos ωx という式の右辺の cos ωx という関数に注目してください。r (x) = cos ωx という関数は、 (d/dx)2r + ω2r = 0 という微分方程式の解ですね。
そこで、この微分方程式に、r = y'' + y を代入します。代入した結果の方程式の一般解がわかれば、 その一部が元の方程式の一般解になっているはずです。
実際に計算してみましょう。
これは、次のように因数分解できます。(d/dx)2 (y'' + y) + ω2(y'' + y) = 0
これは、ω = ±1 の場合とそれ以外とで場合分けして考える必要があります。[(d/dx)2 + ω2] (y'' + y) = 0 [(d/dx)2 + ω2][(d/dx)2 + 1]y = 0
この方程式の一般解は、
になりますね。ところが、このすべてが元の y'' + y = cos ωx の解になるわけではありません。なぜなら、 元の方程式は二階ですから、一般解には未定係数が 2 つしかないはずなのに、この解には 4 つの未定係数があるからです。y = c1 cos x + c2 sin x + c3 cos ωx + c4 sin ωx
これを元の方程式に代入して、c1 〜 c4 が満たすべき条件を調べましょう。 (各自で計算せよ(^_^;)) 結局、c1 〜 c4 の満たすべき条件は、
上の式をさらに因数分解しましょう。
重解ですから、ちょっとした注意が必要になります。単純に、 一般解は y = c1eix + c2e-ix だというわけにはいきません。 なぜなら、もともとの方程式は二階とはいえ、 いま解いているのは四階の方程式なので、 4 つの未定係数が必要だからです。(d/dx - i)2 (d/dx + i)2 y = 0
さて、(d/dx - λ)2y = 0 の解は y = (c1x + c2) eλx でしたね。 今回のケースは λ = ±i の場合ですから、一般解は y = (c1x + c2) eix + (c3x + c4) e-ix となります。
ここで、複素数の指数関数のままではわかりにくいので、 実数の三角関数の形に書き直しましょう。
これを、a. と同様に元の方程式に代入します。 そうすると、y = (c1x + c2)(cos x + i sin x) + (c3x + c4)(cos x - i sin x)
= [(c1+c3) x + (c2+c4)] cos x + [(c1-c3)x + (c2-c4)] i sin x
= (p1x + p2) cos x + (m1x + m2) i sin x
(p1=c1+c3、p2=c2+c4、 m1=c1-c3、m2=c2-c4)
ということになり、結局、(各自で計算せよ)
となります。(μ = m2i)y = p2 cos x + μ sin x + (x/2) sin x
この形では、x が大きくなるにつれて振動の振幅が無限に増えていきます。これが、y と外力 cos ωx との共鳴現象と言われるものです。
では、r (x) がそのような素直な関数ではない場合、 たとえば、r (x) = tan x のような場合は、 どうなるでしょうか。r (x) が解になるような微分方程式がうまく作れなかったり、作れても解きにくかったりします。
そこで、今まで何度か出てきた定数変化法を使うことになります。
以下ではまず、一般形の方程式 y'' + ay' + by = r (x) での解き方を説明します。
斉次方程式(r (x) のない方程式)の解を y = c1y1 + c2y2 とします。そこで、この c1、c2 が定数ではなく x の式であると仮定して、r (x) を含んだ方程式に代入します。
ここで、c1(c1' や c1'' ではなく)のかかっている項は、 全部まとめて c1(y1'' + ay1' + by1) となりますが、 y1 は y'' + ay' + by = 0 の解ですから、これは 0 になります。同様に、c2 のかかっている項も、全部まとめて 0 になります。 これを利用して式を整理しましょう。(c1y1'' + 2c1'y1' + c1''y1) + a (c1'y1 + c1y1') + bc1y1
+ (c2y2'' + 2c2'y2' + c2''y2) + a(c2'y2 + c2y2') + bc2y2 = r (x)
すると、この式はじつは次のように書けます。c1''y1 + 2c1'y1' + ac1'y1 + c2''y2 + 2c2'y2' + ac2'y2 = r (x)
(c1'y1 + c2'y2)' + a(c1'y1 + c2'y2)' + (c1'y1' + c2'y2') = r (x)
これの一般解を求めるのは面倒です。しかし、特解さえわかれば §2.2.1 の方法に持ち込めるので、ここでは特解を探すことにします。
その方法にはいろいろなものがありますが、 たとえば次の条件を満たすものがあれば解になりますね。
さて、肝腎のこの連立方程式の解き方ですが、理論上は §2.1.4 でやったようにクランメールの公式で解けます。(そうすると、 やはり分母にロンスキヤンが出てきます。)あるいは、 大規模な方程式をコンピュータで解く場合はガウスの掃き出し法を使います。 もちろん、2 階や 3 階の方程式を紙と鉛筆で解く場合は、 中学生の使う方法がいちばん簡単です。