Copyleft 1998 KHK運動中央執行委員会 / 飯嶋浩光(でるもんた)
従来は、過去問といえば、LaTeX で組版したものを Postscript 形式で配布するのが一般的でした。 しかし、数学や物理の一部科目はともかくとして、 その他多くの科目の過去問をわざわざ、 きれいな出力ではあるが難解な LaTeX で組む必要がどこにあるでしょうか。
数式や図を含まない多くの科目の場合は、 HTML でまったく問題なく組版できます。 たとえば、97 年夏学期「法と社会」(大越義久教官) の試験問題を見てください。 これは、表題や注意書きを除けば以下の一文だけです。 HTML で書くほうが、過去問制作者にとっても読者にとっても、 あきらかに簡単です。
10 月に施行される予定の「臓器移植法」 のもたらすであろうプラス面並びにマイナス面は何か、 そしてそのマイナス面を是正するにはどのようにすればよいのか、 について論じなさい。
さらに、数式を含むものでも、HTML で組版可能なものは多数あります。 「x3 + y3 = z3」 などの簡単な数式ならばじゅうぶんに可能です。 また、行列・積分などの複雑なものでも、現在の市場をほぼ独占している Netscape Navigator と Microsoft Internet Explorer のみを前提すれば、 多少見苦しい点はありますが以下のように製版が可能です。 (これは、表組み機能で実現しています。)
∫0∞ | v(t) dt = |
|
( | pi | ) | |||
qi | ||||||||
ri |
どんな HTML ブラウザでも閲覧可能なことを信念とする人は、 このような「ブラウザ依存」に異を唱えるでしょう。 しかし、そのような問題に対しては、 ブラウザ依存の記法をしているもののみを Postscript ファイルまたは GIF 画像(私は後者を推奨)に変換して並行配布すれば、 それで事足りるはずです。
Postscript ファイルを閲覧するための Ghostview というソフトは、システムに比較的大きな負担をかけます。 それに対し、HTML で組んでおけば、 目次を開いた後でそれぞれの過去問を開いたときに、 システムへの追加負担がほとんどありません。
上と関連しますが、HTML ならば、 各データを開いたときに、遅延なく画面に表示されます。 したがって、文書をじっくり見てから、 印刷すべきかどうかを判断することができます。
Postscript の場合、延々待たされるのに業を煮やして、 ろくに中身も見ずに印刷ボタンを押してしまうということ、 ありませんか?
従来の過去問製作に使われている LaTeX は、 初心者には非常に難解なもので、 慣れないとなかなかうまく組版できません。
また、印刷にも気を使います。 つい最近まで、LaTeX の出力である DVI ファイルや、 それを変換処理した Postscript ファイルを plain text 用の方法で印刷して無駄紙を発生する事故が 頻発していました。
いっぽう、HTML ならば、 初心者でも最低限の組版はできますし、 目次ページにたどりつける人ならば だれでも簡単に印刷できます。
(私自身、 相談員の仕事をしていて、 「LaTeX で正常に組版できない」という相談に対しては、 HTML か plain text での組版を奨めています。)
UNIX 環境では、LaTeX や Postscript のデータの閲覧・印刷ができることは半ば常識です。
しかし、Windows や Macintosh の環境では、 Postscript は「たくさんあるプリンタ記述言語のひとつ」 すなわち「プリンタドライバのみが関知すべきもの」 として認知されています。 たしかに、Windows 版の Ghostscript + Ghostview をインストールすれば解決する問題ではありますが、 初心者にそれを要求するのは酷です。
99 年度からは、情報棟のシステムが全面的に Windows に変更になるという噂がささやかれています。 これはあくまで噂ですし、1998 年 2 月現在、 ECC では「99 年度以降の新システムについては、 まだ何も決まっていない」とコメントしていますが、 もしそれが事実とすると、 99 年度以降のデータの引き継ぎに、 もしかしたら影響があるかもしれません。
とはいえ私は、なんでも HTML だけで組版することを主張するわけではありません。 複雑すぎる数式や図形などを HTML で組版するのは不可能ですし、 中国語・韓国語など、標準の日本語 Windows/Macintosh 環境には必要な活字がないため、 HTML で組んでも KHK 運動の目的が達成できない場合もあります。
このようなものについて、私は 「HTML に直接張り込める GIF 画像ファイル」での提供を提唱します。 要は、「標準の HTML ブラウザ環境と親和性の高い方式」 での提供を目指すということです。