昔から、こういう主張を耳にすることがしばしばある。
この考え方は、「ある日とつぜん大きなトラブルが発生した」 というケースなら、正しい。 たとえば、コンピュータのオンラインシステムに修正を加えたらダウンした、 というような場合は、 まず修正前のものに戻してから原因究明にあたるのが早期復旧の鉄則だ。
しかし、「○○という問題」が一朝一夕ではなく、 しばらく時間をかけてじわじわと顕在化してきた問題であるならば、 これは間違いだ。
たとえば、こんな主張を見てみよう。
…これは非常に危険な考え方である。
というのは、 たとえ「父親の権威の低下」というのが事実だという前提に立っても、 それによって、気がつかないうちに、 マイナス面とともに何かプラスの面が必ず生じているはずなのである。 それはたとえば、嫁が夫や姑に虐待される事例の減少だとか、 女性の社会進出だとか、そういう大きなものかもしれない。
だから、「昔に戻す」ということは、 そのマイナス面を一気に再噴出させることでもあるのだ。 もし強引に歴史の針を巻き戻そうとしたとき、 社会はその軋轢に耐えられるだろうか。 耐えられるという確信がなければ、そういうことを絶対に行ってはならない。
繰り返す。安易に歴史の針を巻き戻そうとしてはならない。