平成 9 年度冬学期試験問題
認知神経科学(月 5) 担当: 酒井邦嘉

1998 年 2 月 9 日実施 試験時間: 90 分
問題用紙: マークシート片面 1 枚、B4 用紙両面 1 枚

注 1: 両方の解答用紙に、学生証番号と氏名を記入すること
注 2: ノートおよび教科書等の持込みは不可

第 1 問(基礎問題)

解答にはマークシートを使用する。まず学生証番号を忘れずにマークせよ。 a. は 1 から 10、b. は 11 から 15、c. は 16 から 20、 d. は 21 から 25 の欄に記入する。 マークする数字は、各欄につき 1 つに限る。 記入欄がずれたりすることのないよう、特に注意すること。
  1. 次の記述に最も関係の深い用語を下のリストから選んで、 その用語の番号をマークせよ。 ただし、同じ番号を 2 回以上選んではならない。

    1. 自転車の乗り方やパズルの解き方は、 何年経っても忘れない。
    2. 頭を打ったショックで、 自分の名前もわからなくなってしまった。
    3. 友人の顔を見ただけでは、 誰であるかがわからなくて困っている。
    4. ネコの声色をつかったら、隠れていたネズミが逃げ出した。
    5. ロールケーキを半分に切ったら、 左右の大きさがかなり違ってしまった。
    6. コーヒーポットに指を触れて、あわてて手を引っ込めた。
    7. バナナを報酬として、サルに芸を仕込んだ。
    8. 夏学期の試験前に一夜漬けで暗記したことは、 もうすっかり忘れている。
    9. どんなに努力しても、 事故にあってから今日までのことが思い出せない。
    10. 初めての海外旅行で、 再び訪れたように感じられる風景に出会った。
    1 連合性視認 2 逆行性健忘 3 手続き的記憶  4 デジャビュ
    5 宣言的記憶 6 半側空間失認 7 オペラント条件付け
    8 前向性健忘 9 古典的条件付け 0 反射

  2. 次の記述に対応する脳の部分名を、下のリストから選んで、 その名前の番号をマークせよ。

    1. 覚醒と睡眠のサイクルを制御している。
    2. 自分がしていることをモニターするための意識の座。
    3. 短期記憶を長期記憶に固定化するのに必要である。
    4. 外界に注意を向けるときに必要である。
    5. 無意識的な認知行動のパターンを記憶している。
    1 大脳 2 小脳 3 脳幹 4 海馬 5 視床

  3. 次の記述が、正しければ 1 をマークし、誤りならば 0 をマークせよ。

    1. チェスのコンピュータが世界チャンピオンのカスパロフ氏に勝ったのは、 ヒトの思考のメカニズムが解明されたからである。
    2. 色覚失認は、視覚前野の一部である V5 野の損傷で起こる。
    3. ポップアウトの十分条件は、他と異なるものが 1 つ存在することである。
    4. 海馬の記憶回路は、 両方向性の情報の流れが本質的である。
    5. 心的イメージは、 記憶がボトムアップ的に構成されて生ずる。

  4. 意識には 3 つの階層があると考えられる。 次の記述に対応する意識は、どのような意識に分類されるか、 第 1 レベルの意識ならば 1 を、第 2 レベルの意識ならば 2 を、 第 3 レベルの意識ならば、3 をマークせよ。

    1. チンパンジーも、 鏡に映った像が自分であるとわかるらしい。
    2. 徹夜でレポートを完成させたので、 授業中に眠気を催した。
    3. この指輪をプレゼントしたら、 きっと彼女は喜ぶだろうと思った。
    4. 突然黒いものが頭上を通り過ぎたと思ったら、 カラスだった。
    5. 初めて車の運転を練習したとき、 全身に力が入るのを感じた。

第 2 問(応用問題)

解答には B4 用紙の表のみを使用する。まず氏名等の必要事項を記入せよ。
  1. 網膜から 1 次視覚野に至る視覚伝導路の損傷は、 視野の欠損を引き起こす。次に示す部分が損傷した場合、 予想される視野の欠損部分を図示せよ。 片目のみで見た前視野を○で示し、左目・ 右目それぞれについて、欠損部分を黒く塗りつぶすこと。

    1. 左の視神経
    2. 視交叉の正中部 (正中線で視交叉が左右に分離した場合)
    3. 左の視索
    4. 右の外側膝状体
    5. 右の 1 次視覚野の下側半分の前部

  2. 次の文章は、色の恒常性について解説した「From Newron to Brain(第 3 版)」の一節である。この実験では、 いろいろな大きさの色紙を何枚も貼りあわせて作ったモンドリアン図形を、スクリーンに貼りつけてある。
    すべての色の波長に対して等しい感度を持つ測光器 (反射してくる光の強さを測る器械)を、 黄色の色紙の方向に向ける。緑と青の投光器 (スクリーン全体を照らすプロジェクター) を消して、測光器の目盛りが 1(ある一定の単位で) になるように、赤の投光器の明るさを調節する。 次に赤の投光器を消し、緑の投光器だけをつけて、 測光器の目盛りが同じ 1 の値となるように緑の投光器の明るさを調節する。この同じ作業を、 青の投光器についても繰り返す。この 3 台の投光器を同時につければ、この黄色の色紙からは、 等しい量の赤・緑・青の光が反射してくることになる。 これを眼で見ると、 1黄色の色紙は黄色に見える。

    さて、以上と同じことを緑色の色紙について繰り返したとしよう。つまり、赤・緑・青の光を、 測光器に同じ強さで反射してくるように、 それぞれの明るさを調節する。(A)すると、 緑色の色紙から眼に反射してくる光は、 黄色の色紙を用いた最初の場合の光と、 正確に同じ色の成分を持つことになる。それでは、 この緑色の色紙は何色に見えるだろうか。直感的な答えは、 「黄色」である。しかし、2実際には緑色に見えるのである。 この結果は、モンドリアン図形を全体として見ている限り、 いつも正しい。しかし、まわりの部分に黒い覆いをかけて、 その 1 枚の色紙だけを見たならば、 色の恒常性は保たれない。3緑色の色紙は、 黄色に見えるのである。このように残りの部分を覆って緑色の色紙を単独で見たときには、その色は 3 波長の光の相対的な強さによって決められる。 全体として見る場合には、同じ照明の条件で覆いを取り去ると同時に、4その色紙は緑色になるのだ。この注目すべき効果は、 判断や順応などには依存しない。

    以上の文章には、下線をつけた部分のいずれかに明らかな誤りがある (原文の誤りであって翻訳の誤りではない)。1〜4 の中から誤っているものの番号をすべて選び出し、 その理由を述べて、正しく訂正せよ。

  3. 白熱灯の照明のもとで緑色の色紙だけを 1 分間注視してから、 スクリーンを一様な灰色に変えると、緑色の色紙があったところに、 心理的な補色である赤色が見える。 これが残像と呼ばれる現象である。b. の文章の(A)の条件でモンドリアン図形を 1 分間注視して、 スクリーンを一様な灰色に変えると、 緑色の色紙があったところには何色の残像が見えるだろうか。

  4. 残像のメカニズムに関する一説に、「疲労説」がある。 この説によれば、緑の光を長時間見ると、 緑の光を受容するニューロンが疲労してきて、 緑に対する感受性が一時的に弱くなるので、 補色が見えることになる。b. と c. で得られる事実は、 この疲労説を支持するか、それとも支持しないか。 どちらか一方を選び、その理由を簡潔に述べよ(ボーナス点あり)。

第 3 問

解答には B4 用紙の裏のみを使用する。
  1. 講義内容、講義の進め方、テキスト、試験などについて、 自由に意見や感想を述べよ。
  2. この講義に関連して、自分が最も関心を持ったテーマを 1 つ挙げ、それについて考えたことを述べよ。

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